映画『ファンタスティック・プラネット』 感想 ~宮崎駿監督も影響を受けたとされる、シュールレアリスムな世界観~

映画レビュー
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「なんだ、このアニメは…!??」
それが、本作『ファンタスティック・プラネット』を知ったときの一番の感想でした。

私が本作を知ったきっかけは、実はYouTubeのとある楽曲にPVとして投稿されているのを見たことからなのですが、
とにかくその絵のシュールさと奇怪な物語描写に、一体何のアニメなのだろう…と強く惹かれたというのが率直な気持ちです。
幸い、動画の説明欄にアニメのタイトルは記されておりましたので、すぐに調べはつきましたが、
伝説的なカルトアニメというネット上の評価にますます関心が沸き、おもいきって視聴するに至ったという次第です。

『ファンタスティック・プラネット』あらすじ

フランスの代表的SF作家ステファン・ウルの小説『オム族がいっぱい』を原作とする長編アニメーション映画。
共同脚本も担当したローラン・トポールが原画も手がけている。監督は「時の支配者」のルネ・ラルー。
1973年のカンヌ国際映画祭で、アニメーションとして初めて審査員特別賞を受賞した。

人間より遥かに巨大で、全身真っ青の皮膚に目だけが赤いドラーク族が支配し、人間は虫けら同然の惑星。
孤児となった人間の赤ん坊がドラーグ族の知事の娘ディーヴァに拾われ、ペットとして育てられた。
テール(地球の意)と名付けられた赤ん坊は少年となり、ディーヴァが勉強に使っている学習器をこっそり使い、この惑星についての知識を深めていく。

映画.comより引用

(以下は、私がこの作品を知るきっかけになったPVです。映画を観てから改めてみると、歌詞と映像の合わせ方になるほどと思わされる箇所が多いですね)

主人公のテールは、ドラーグ族による”悪戯”により母親を亡くし、偶然通りがかったドラーグ族の知事(彼らは高い知力を有しており、きちんとした文明社会を築いているようです)の娘ティヴァに拾われ、彼女のペットとして生活することになります。

ティヴァは幸いにして、テールを虐待したり、粗末に扱ったりするようなことはありませんでした。
一緒に遊んでくれますし、お風呂に入れてもらったり服を与えてくれたりと、生活そのものに不自由することはありません。勉強も一緒に受けさせてもらえます。

ただし、テールの首には、逃げ出そうとすれば磁力のようなものですぐに引き戻される首輪が嵌められており、テールに一切の自由はありません。

ティヴァのもとで育ち、知識を吸収するうちに自我が芽生えてきたテールは、ついに自由の身になろうととある行動を出ることになるのでした…。

シンプル、かつ「一切の無駄」をそぎ落としたストーリー

奇怪な絵柄とキャラクター描写に反して、思いのほかストーリーは一本調子で分かりやすい展開でした。

本作の舞台は広大な宇宙の中のとある惑星としか明かされておらず、また、主要人物であるドラーグ族についても、どのような文明社会を築いているのか、どのような能力があるのか、といったような情報は殆ど明かされておりません。
(県知事が存在するとのことですので、ほぼ地球上の人間社会と変わらないのでしょうが)

わかるのは、巨大な体を持ち、高度な知識を持つ彼らが、自分たちよりも遥かに小さく、また知的水準も低いゆえに原始的な社会生活しか営めない人間たちを蔑んでいる、ということだけです。

この一切の無駄をそぎ落としたシンプルなまでの世界観、そしてストーリー展開が、かえって人間が奴隷として扱われているという残酷な現実をありありと突き付けてくるなぁ…と思ったものでした。
ドラーグ族が人間狩りを始めたときの描写は、直接的なゴア表現こそないものの人間たちの抵抗むなしくどんどん命を摘み取られていく様子がかなりきついものがありましたね。
ドラーグ族に「飼育」されている人間たちが、同じ種族である人間狩りに協力しているという構図もなかなか残酷でした。

一度見たら夢に出てきそうな奇々怪々なキャラクターたち

ご紹介いたしました画像や動画を見てお分かりかと思いますが、本作の絵柄は一度見たら夢に出てきそうな奇々怪々な世界観で彩られています。
その独特かつ奇怪なキャラデザイン、写実的でまるでアニメというよりも挿絵のような作画はアニメーションという枠組みを通り越してもはや芸術作品と言ってもよいのでは…?と思われるほどです。
(どこか不思議の国のアリスの初期の挿絵を思わされますよね)

特に、巨体を持つドラーグ族のキャラデザインが強烈ですね。笑
全身真っ青で、魚のヒレのような耳を持ち、目は丸く真っ赤で、時折「瞑想」という不思議な儀式に講じている。
本当にこれぞ一度見たら忘れられないキャラクター造形です。

また、ドラーグ族、人間族以外にも巨大な異形の生き物たちが数多く登場します。
彼らの個性的かつシュールなキャラクター造形もなかなか味がありましたね。
(この奇怪な巨大生物の描写と荒廃した世界観、どこかで見たことあるな~と思ったら風の谷のナウシカでした。調べてみれば、宮崎駿監督が本作を鑑賞されたことがあるそうで、どうやらナウシカの世界観はこの作品からかなり影響を受けたようですね)

最小限の動きで描かれる、「動く絵本」のような作画

そんな本作は音楽表現も映像表現もやはりシンプルなものでした。

特に、映像表現に関してはアニメーションというよりも「動く絵本」と言っていいのでは、というぐらいキャラクターの動きが非常に少ないです。
ドラーグ族による人間狩りの描写も、先に述べたように直接的なゴア表現がないだけでなく非常にゆったりとした動きで描かれています。

ただ、これまたゆったりとしているからこそ怖いのです。
派手な動きがないからこそ、直接的な表現が少ないからこそ、じんわりとした恐怖心や嫌悪感を感じさせられる。

本作ほど静的な表現の凄みを感じさせられる作品はなかなかないのではないでしょうか。

個人的に印象に残ったのは、人間たちがドラーグ族の仕掛けたトラップにかかり死亡してしまった同胞を見ながら、泣くでも喚くでもなく静かに微笑みを湛える描写でした。
決して同胞をあざ笑っているのではない、なるべくしてなってしまったんだという残酷な現実を笑って受け入れることしかできない、そんな人間たちの無力さと悲しさを感じさせられる描写だったと思います。

まとめ

非常に独特な世界観でしたが、ストーリーは明快で一本筋が通っていて、視聴前の第一印象に反して見やすい作品でした。

ドラーグ族と人間族、という支配被支配の構造につい目が行きがちですが、人間たちの間でも部族間の対立があったり、また人間に使役されている動物もいたり(=人間がいわゆる「最下層」の地位というわけではない、という暗示)…などなど、人間側にも色々と考えさせられる描写があったのもまた深いですね。

私たち人類は「たまたま」高度な知能を持ったおかげで、地球上ではあらゆる生命体の頂点に立つ存在となっていますが、もしも人間たちよりも遥かに高い知能と生命力を持った生物が存在していたら、果たしてどうなるのでしょうか。
古今東西、そうしたIF作品は数多く描かれていますが、そうした作品が描かれるということは、人々の心の奥底に決して人類が「最強の生物」というわけではない、という認識があるのだろうな、と思います。
実際、知能はともかく身体能力に関しては人間はあらゆる野生動物と比べて遥かに劣っていますしね。

シュールな絵柄やキャラクターなど美術的な観点からしても、「人類対異生物」というテーマを描いた作品としても、見ごたえのある作品でした。


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