犯人視点で振り返ってみる 劇場版名探偵コナン 『瞳の中の暗殺者』感想・後編~犯人たちの事件簿~ ※犯人・トリックのネタバレあり

映画レビュー
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前回の記事では、劇場版名探偵コナン『瞳の中の暗殺者』について、主要キャラクター周辺やコナン/新一と蘭との関係を中心に感想記事を書かせていただきました。

今回の記事では、劇場版コナンには欠かせない犯人と、犯人が用いたトリックについて感想を述べたいと思います。(おもいっきり、金田一少年の事件簿の犯人たちの事件簿に乗っかっています。笑)
最初からネタバレ全開ですので、くれぐれもお気を付け下さい。





















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犯人と動機について

ずばり、今回の一連の警察官射殺事件、そして目撃者である蘭の命を狙っていた犯人は、
蘭の担当医であった心療医の風戸京介先生でした。

劇場版名探偵コナン『瞳の中の暗殺者』より

彼はもともとは外科医で、若手ナンバーワンと呼ばれた優秀な医師だったのですが、
あるとき同僚の医師・仁野医師との共同執刀中に「誤って」メスで利き手である左手を切られてしまいます。

その結果、黄金の左腕と呼ばれた先生の腕は落ちてしまい…絶望した彼は外科から心療科へと転向、またプライドのためか左手を封じ右利きとして生活するようになったのでした。

…と、ここで話が終わっていれば平和に終わるのですがそうはいきません。
数年後、偶然仁野医師と再会した風戸先生はあの事故はわざとだったのではないかと問い詰めます。

そして仁野医師がやはりわざと風戸先生の左手をメスで傷つけたのだということが判明。
怒りに燃える先生は仁野医師を自殺に見せかけて殺害します。

そして、仁野医師の死は手術ミスを詫びての自殺だということで片付けられていた…
はずが、警察内部で再捜査の動きがあることを先生は知ります。(先生は警察関係者のカウンセリングも行っており、そのつてで知ったとのことでした。)

再捜査の手が自分に及んでしまったら終わりだ、と考えた先生は、捜査を担当する警察を次々と手にかけていったのでした。

…この動機に関しては、たとえ担当刑事全員を殺害したとしても、別の刑事に捜査が引き継がれるだけなので正直意味がないのでは…というのは突っ込んではいけないところでしょうかね。汗

仁野医師との再会と、あの事故はわざとだったという事実を知ってしまったことが凶行のトリガーになってしまいましたが、実際には事故以来、ずっと「なぜ自分がこんな目に遭わなければいけないのか」と自問自答し続けていていたのではないでしょうか。
根は真面目そうな人なので相当な精神的ストレスを抱え込んでいたものと思われます。
そんな彼がよりにもよって人の悩みを聞きその人の心に寄り添う心療科医師への道を歩んだというのはなかなか興味深いですね。

トリックについて

奈良沢刑事のカウンセリングを通して、一年前の事件が再捜査されることを知った風戸先生は、何を血迷ったのか白昼堂々とターゲットの真正面から銃をぶっ放す(一応サイレンサーを付けてはいましたが…)というとんでもなくリスクの高い手段を用いて、最初のターゲットである奈良沢刑事を仕留めました。

劇場版名探偵コナン『瞳の中の暗殺者』より

自分は絶対に捕まらないという謎の自信があったのか、それとも再捜査の話を聞いてから、相当焦りや精神的ストレスを溜め込んでいたのか
恐らく後者だったのではないかと思います。
というのも、自信があるんだったら、そもそも再捜査されるという話を聞いても堂々としていると思うんですよね。
確かに先生と仁野医師との間に接点があったことは調べれば分かることではありますが、物的証拠がない以上は捕まることはないのですから。(仁野医師の生前の行いから察するに、彼に恨みを持っている人は沢山いそうですしね…)
なのにこのような凶行に及んだということは、よっぽど不安定な精神状態だったのだろうと思われます。
それにしても多少の変装ぐらいすれば良かったのに…(奈良沢刑事にダイイングメッセージを残されたことからして、素顔丸出しでの犯行だったんでしょう)
『14番目の標的』の犯人は人前で手を下すときはちゃんとヘルメット被っていましたよ汗

そして次のターゲットである芝刑事も殺害するのですが、ここで機転を利かせて警察手帳を芝刑事の手に握らせ、警察内部に犯人がいるかのように見せかけるという偽装工作を行います。
一件目、二件目の殺人がともに成功して、精神的に余裕が出てきたということでしょうか。

そして、三人目のターゲット、佐藤刑事を撃つ際には、

・予め仕込んでおいた爆弾で停電させ、(爆破シーンを入れるのは劇場版コナンのノルマみたいなものなんでしょうか)

・わざとつけっぱなしの懐中電灯を女性用トイレにセットしておき(なかなかハードなミッションですね…)

・懐中電灯の明かりを頼りに、硝煙反応を残さないようあらかじめ穴を開けておいたビニール傘から手先のみを突き出して発砲する(拳銃をどこに隠し持っていたのかが謎です…)

という、初めてトリックらしいトリックを用いています。
今から思えば、映画の冒頭シーンで雨が降っていたのはトリックに傘が使われるという伏線だったのかもしれませんね。
(このトリック自体は単純なものなのですが、前編でも述べた蘭の記憶を取り戻す演出の一環として用いられている、という二重の仕掛けがあるということに関しては本当に見事なアイデアだと思います。)

そんな先生の最大の不運は、当日の天気が晴れで、他に傘を持ってきている人がいなかったため、一本だけ傘立てにあった傘をコナンに不審に思われてしまったことでしょうか。

大事な証拠品である傘を事件後に処分しなかったのも結構致命的なミスですよね。
この件に関しては、ホテルの受付のお姉さんが見事なファインプレーを見せてくれたと思います。

蘭の担当医として

先生としては記憶を失った蘭と対面するまでは本当に気が気じゃなかったでしょうね。
ほんの一瞬とはいえ自分の顔をバッチリ見た目撃者ですから。よく平静を装って蘭の診察を済ませられたなと思います。
細かいですが、蘭の診察後に高木刑事&千葉刑事と入れ違いに部屋を出ていく一場面、背中越しなので先生の表情は窺えないんですがこのときどんな顔をしていたのか気になりますね。自分が犯人であるとバレなくて安堵の表情を浮かべていたのか、それとも新たなターゲットができたことで殺意に燃えていたのか…。

二度ほど、黒い犯人の恰好(通称黒タイツ)で蘭の様子を監視しているシーンがありましたが、

劇場版名探偵コナン『瞳の中の暗殺者』より

彼女が家族や友人たちと話しているうちに何らかのきっかけで記憶を取り戻すことがないかどうか、見張っていたんでしょうね。
しかし病院内ということは、監視がしやすいという一方で蘭と頻繁に顔を突き合わせる=「犯人」の顔を思い出させるリスクが高くなる、ということなので、内心では本当にヒヤヒヤしていたのではないかと思われます。

このときの先生に、心療科医としての心が少しでも残っていれば、家族や多くの友人達に心から心配されている蘭の姿を見て多少なりとも思うところがあったのかもしれませんが(立場上、家族や友人とうまくいっていない、などいろんな事情を抱えた患者さんたちと接してきたことでしょうし)
患者さんの大事な個人情報(捜査情報)を悪用し、自己保身のために警察官を次々と殺害し、何の罪もない一般市民である蘭の命まで狙ったという時点で、もう彼に医者としての心は残されていなかったのでしょうね。
(後述しますが、”患者さんの個人情報を悪用した”も、殺人までは行かずとも医師としては大問題ですよ…)

遊園地での命がけの「追いかけっこ」

蘭に顔を見られてしまったという想定外のアクシデントや、その蘭の口封じに取り掛かろうとも肝心なところで邪魔(=コナン)が入り、何をやってもうまくいかないことに恐らく相当なストレスを溜め込んでいたであろう風戸先生は、なんと人が多く集まるトロピカルランドで蘭の殺害を試みます。

劇場版名探偵コナン『瞳の中の暗殺者』より

終盤は、ひたすらトロピカルランドでコナン&蘭を追い掛け回すという命がけの追いかけっこに終始しているのですが、
このときの先生の豹変ぶりに9割ぐらいの観客の方はお前誰だよ…!?と思ったのではないでしょうか。
どこぞのサバゲー同好会の人かと思われるような奇抜なミリタリーファッション。
暗視用ゴーグル。
拳銃。
サバイバルナイフ。
よくこの格好で、しかも成人男性一人で遊園地に入場できたものだ…と思います。
そんなガバガバなセキュリティーしてるから何度も何度も物騒な事件に巻き込まれてるんじゃないでしょうかあの遊園地…汗
ついでに、運動能力も並外れていますね。ボートを操縦しながら片手で発砲するとか。
『14番目の標的』の犯人のバイク技術も相当でしたが、この人も本当に医者が本職なのか?と思うぐらいなかなかスペックが高いです。(奈良沢、芝刑事の殺害は完全に力押しの犯行でしたし、基本的に頭脳派というよりは行動派な犯人ですよね)

そして、正体判明時は特に何の疑問も持たずにコナンの推理を聞いてくれますが、どう見ても6~7歳程度にしか見えない少年が、7年前の仁野医師との執刀中の事故についての考察をドヤ顔で語っている姿を目にしても何も思わなかったんでしょうか。
そこは『コナン』のお約束というか、突っ込んではいけない部分なのかもしれませんが。
ちゃんと律儀にコナンの推理を聞いてくれる上に、噴水広場でのラスト10秒のカウントのときもカウントが0になるまで待ってくれていたりと、なかなか空気の読める犯人ですよね。(カウントが終わったら何が起こるのか密かに気になっていた…とか?)
その詰めの甘さが最大の命取りになってしまいましたが。

ところで、最終的には記憶を取り戻した蘭の空手で成敗された先生ですが、初期の蘭の強さも相当ですが、昨今においては銃弾を避けられるようになるほどレベルアップしていますよね。もし風戸先生が今の蘭の戦闘力を目の当たりにしたらどう思うんでしょうか。笑

『瞳の中の暗殺者』 犯人視点で振り返ってみた感想まとめ

この映画で一番の恐怖は、蘭にとって、親身になって治療にあたってくれていた自分の担当医がまさかの自分を殺そうとしている犯人だった、というオチでしょう。
私自身も実は心療内科に通っているのですが、心療科の先生というのは、悩みを抱えて受診する患者さんにとって何でも打ち明けられる、絶対的な信頼を置ける(置きたい)存在です。
そんな先生がまさか自分の命を狙っていた張本人だったなんて、恐怖でしかありません。
蘭だけでなく、カウンセリングを受けていた他の警察関係者(特に重大な捜査情報を喋ってしまった白鳥警部)もこの事実にはさぞかしショックだったでしょうね。

最初から最後まで犯人の行動を振り返ってみると、殺人をこなすごとに少しずつ精神的に余裕が生まれていった(トリックらしいトリックを用いていた佐藤刑事のときが一番、精神状態が安定していたように思いますね)ものの蘭に顔を見られてからは焦りと動揺から再び気持ちに余裕がなくなり、なりふり構わず蘭を付け狙うようになっていったように思いますね。
執拗に蘭とコナンを付け狙う描写から、目的のためなら誰がどうなっても構わない、血も涙もないサイコキラー的な犯人像として描写されてはいましたが、実際には作中全体を通して非常に不安定な精神状態だったのではないかと思います。
心療科医なのに自分の心の治療はできなかった、というのはなんとも皮肉な話ですね。

医師やカウンセラーも人間です。人の悩みを聞くというストレスの溜まりやすい仕事上、誰かに話を聞いてほしい、と思うことも多々あるのではないでしょうか。
何人もの人の命を奪った風戸先生の罪は重いですが、最初の殺人に関してだけは正直言って同情を禁じ得ないんですよね。(仁野氏は医師としてだけでなく、人としてもどうかと思います。彼のせいで人生を狂わされた人は大勢いるでしょう)
仁野氏と偶然再会しなかったら、話を聞いてくれる”誰か”がいたら、少しは先生の運命も変わったのではないか…と思ってしまいます。

まぁ、先生の場合、最初の殺人に関しては同情できる部分はあるものの、結果的に自分勝手な都合で何人もの人間に危害を加えたということを思えば、やっぱりあまり同情はできないですが。

最後はコナンのキック力増強シューズ&蘭の空手で御用となりましたが、人の命を救うはずの医者が人の命を奪う殺人者に成り果て、担当患者(蘭)に危害を加えようとした結果、その患者に返り討ちに遭うって、よくできた話だと思います。

ちなみに、犯人サイドで振り返ってみて個人的に一番好きな場面は、トロピカルランドへ行きたい、と言う蘭に対して「蘭さんは勇気がありますね」と(白々しい)笑顔で返す一場面ですね。
真犯人を前にして「私の方から一歩踏み出さないと」と覚悟を見せる蘭と、それに対して表向きには蘭の勇気を称えながらも内心では腹に一物を抱えている犯人、このやり取りは犯人サイドで見てみるといろんな思惑が感じられて、緊迫感溢れる場面だなと思いました。


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『コナン』の感想は前後編でやろう、と銘打ったものの、果たしてレギュラーキャラではない、劇場版オリジナルのキャラクターである犯人についてそこまで語ることはるのだろうか…と正直に言うと不安ではありました。汗
それが蓋を開けてみればこのボリューム。やっぱり、私は『コナン』に限らず、ミステリー作品におけるもう一人の主役は犯人だと考えているんだな、と改めて思いました。
どんな理由があろうと犯罪は許されることではない、というのは大前提ですが、そういったことを承知の上で敢えて俯瞰的に見てみると、犯人は犯人なりに自分の人生をかけて犯行を遂行しようとしているんですよね。
その点に関してはきちんと受け止めた上で作品を見ていくことが、ミステリー作品に触れるにあたって大事なことかな、と個人的には思います。

個人的な感想になりますが、第2作目『14番目の標的』の犯人と本作『瞳の中の暗殺者』の風戸先生はどちらも非常に印象深い犯人ですね。どちらも、温厚で善良そうな人が豹変する、というギャップが凄いです。
ふと思ったのですが、この両名が(『標的』の犯人が例の事故の後、風戸先生のカウンセリングを受けるとかなんとかして)出会っていたらどんな展開になるのか、少し気になりますね。
天職を奪われたことに対しての絶望と奪った者に対する憎しみを抱いた者同士、意気投合して交換殺人なんて手段に出るんじゃないかという気がしないでもないです(とはいえ、標的はあくまで自分の手で仕留めたい、と思うのであればそれはないかな)

また機会があれば、コナン映画の感想記事を前後編で書いてみたいと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

(※)劇場版名探偵コナン『14番目の標的』の感想記事も書かせていただきました。


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