一昨年の秋頃に公開された映画『プーと大人になった僕』について、今更ですが感想記事を書かせていただきたいと思います。
この作品に関しては、あれこれ考えずにとにかくありのままを受け入れて観る映画だと思っておりまして、小難しいレビューなど不要だというのが私の考えなのですが、
公開から一年以上が経ち、私個人の生活事情にも色々な変化があった今、改めて少し振り返ってみたいと思います。
ちなみに、筆者が個人的に一番好きなキャラクターは、トラのティガーです。
お調子者な性格だけど実は人一倍寂しがりやで不器用なところもある、という一面もあるところが愛おしいですね。
あらすじ
月日が流れ大人になった彼は、愛する妻や娘とロンドンで暮らしながら、旅行カバン会社のウィンズロウ社で多忙な日々を送っていた。
しかし、忙しすぎるゆえに家族との約束も守ることができず、思い悩んでいた彼の前に、かつての親友プーが現れ……。
-映画.comより引用
キャスト…ユアン・マクレガー・ヘイリー・アトウェル・ブロンテ・カーマイケル 他
スター・ウォーズシリーズのオビ=ワン役でおなじみの、ユアン・マクレガー氏が主人公のクリストファー・ロビンを演じておられます。
ちなみに、日本語吹き替え版は俳優の堺雅人さん。
公開のタイミング的にも、そしてストーリーの一部描写的にも時折「倍返しだ!」のセリフが脳裏によぎってしまうことがチラホラありましたが、それでもごく自然体で良い演技をされていたと思います。
心に余裕を持てなくなっている「全ての大人」に見てほしい作品
あらすじでも述べられているように、かつてプーたちと共に伸び伸びとした少年時代を過ごしていたクリストファー・ロビンは、大人になり、(ブラックな)会社勤めを続け、非常に多忙な毎日を送っていました。
家にいるときでさえも、本来なら、愛する妻と娘と過ごすかけがえのない時間であるはずが、残業や持ち帰りの仕事に追われる始末。
大切な家族のために働いているのに、その家族との時間を蔑ろにしてしまうという矛盾。
世の社会人の方々の中には思い当たる節がある人も多いのではないでしょうか。
もっとも、彼の帰宅時間を見るに、夜の9時頃という時間帯は我が国の超絶ブラック企業と比べたらまだマシじゃないか、と思えてしまうのが悲しいところですけどね…。汗
そんな時間にただ追われるだけの毎日を送り、いつの間にか家族との絆も不安定なものになりつつあったとある日、クリストファーはかつての親友・くまのプーと思わぬ再会を果たすのでした。
この再会が、クリストファーとその家族(妻と娘)の運命を大きく変えていくことになるのです。
くまのプーをはじめ、キャラクターの外見描写が堪らなく愛おしい
このプーの外見がもう堪りません。笑
おなじみのぽっちゃり体型、少し薄汚れているリアルさ、優しそうな中にどこか寂しそうにも見える哀愁溢れる瞳…と、何から何まで愛おしくなってくる造形です。
ただただ可愛いだけでない、どこか哀愁漂う雰囲気というのがプーさんというキャラクターの大きな特徴だと思います。
また、ピグレット、イーヨー、ティガーら100エーカーの森の住民たちの外見描写も、可愛さの中に哀愁や懐かしさを感じさせられる造形で非常に親しみやすかったです。
ティガーファンの自分としては、ティガーのしっぽが動く度に悶えていました。笑
名言の宝庫である
映画中盤、子供時代と全く変わらない様子で接してくるプーに対して、クリストファーは今の自分は昔の自分とは違う、自分は大人になったんだと言い放ちます。
そんなクリストファーに対して、プーは「子供から大人になったら変わってしまうの?(クリストファー・ロビンは変わっていないよ)」という旨の言葉を返すのですが、そのプーの言葉には(いい歳をした)自分もハッとさせられるものがありました。
そうなんですよね、子供の頃の自分だって、今の自分だって、同じ人間であることに変わりはないんです。
変わるのではなく歳を経ていろいろな経験を経て、今まで見えなかったものが見えてくるようになった、
もしくは子供の頃には見えていたものがだんだんと見えなくなっていってしまった、
そうしたことが「大人になる」ということなのかもしれません。
もう一つ、この映画でハッとさせられた名言があります。
それは、「何もしないをする」という、幼い頃のクリストファー・ロビンとプーの会話の中に出てきた言葉です。
時間に縛られ、物にあふれ、何かとあくせくとしがちな現代社会に生きている身からすればいろいろと考えさせられた一言でした。
(この「何もしないをする」って、わりと真面目に鬱の対症療法にすごく良いかもしれません。)
まとめ
私自身、子供の頃からくまのプーさんは大好きな作品だったんですが、クリストファー・ロビンといえば(年齢的には子供であっても)プーさんたちから見て少し年上っぽい、なんでも困ったことを相談できるお兄さん的存在、言ってしまえば万能のキャラクターというイメージがあったんですよね。
本作は、そんなクリストファー・ロビンが成長し、酸いも甘いも嚙み分けるようになった大人に成長したという設定で、彼に対するイメージが大きく変わった映画でした。
映画のラストでは、それまではきっちりスーツを着込んでいたクリストファーがプーとお揃いの赤いセーターを着ている姿が描かれており、彼がプーとの交流を通して変われたんだな、とほっとさせられたものです。
上にも述べましたが、プーさんたちキャラクターの造形もとても可愛らしく、癒されるというのも大きなポイントですね。
声優さんもおなじみの方々で、あぁ、プーさんの声だ…と懐かしさと安心感を感じさせられるお声でした。
時間に追われ、様々な物理的拘束に縛られ、人間関係に疲弊しきって心に余裕を持てなくなっている「全ての大人」に見てほしい作品でした。
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