映画ドラえもん『のび太の宝島』感想~”ラピュタ”や”エヴァ”を思わせる?海洋SF冒険活劇~

映画レビュー
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数年前の映画になりますが、私の大好きな『ドラえもん』シリーズの中でも、水田わさびさん版ドラえもん(以下、「わさドラ」)の中で特にお気に入りの作品・『のび太の宝島』について感想記事を書きたいと思います。
あくまで個人的な願望ですが、スター・ウォーズファンの方には特に是非観ていただきたい作品です。笑

あらすじ

ドラえもんのひみつ道具「宝探し地図」を使って宝島を探していたのび太は、太平洋上に新しく出現した島を発見。
ノビタオーラ号と名付けた船で島に向かうが、その途中で海賊に襲われ、しずかがさらわれてしまう。
海賊に逃げられた後、宝島の秘密を知る少年フロックとオウム型ロボットのクイズと出会ったのび太たちは、しずかを助けるために宝島を目指すが……。

映画.com より引用

映画の予告やタイトルが公開される前の段階では、チラリと映ったビジュアル(海と海賊船)からして、昔公開された『のび太の南海大冒険』のリメイクかと思ったんですが、蓋を開けてみれば完全オリジナル新作だったという本作。
物語は出木杉くんから宝島の話を聞いたのび太が、宝島への憧れから毎度のごとくドラえもんに相談を持ち掛けるところから大きく動き出していきます。
突如として太平洋上に現れた謎の宝島は、一体何なのでしょうか。
果たしてのび太たちを待ち受けているものとは?
のび太たちにとっての「宝物」を見つける旅が始まります。

魅力的なゲストキャラクター達

今作の主なゲストキャラは、海賊船のメカニックをしていた少年・フロックと、フロックの妹で海賊船のレストランを手伝っているセーラ、フロックが連れているオウム型子守ロボットのクイズ、そして海賊船の船長であり今作の黒幕的存在でもあるキャプテン・シルバーです。
いずれも魅力的なキャラクターばかりなのですが、とりわけシルバーは凄みのあるビジュアルといいその背景といい、強く印象に残るキャラクターでした。声を担当された大泉洋さんの演技も良かったですね。

(予告編で既にネタバレされていたのでここでも書かせていただきますが)実は彼はフロックとセーラの父親で、もとは穏やかで優しい父だったのですが、とある事情から根深い心の闇を抱えてしまい、子供たちを顧みず自らの「研究」に没頭するようになってしまいます。

そんな父の所業に嫌気がさして、海賊船から逃げ出したフロック。
一方で、父が元の優しい父親に戻ってくれること、兄と和解してくれることを一人心から願い続けているセーラ。

親子三人の和解というものが、本作の大きなテーマであると言えるでしょう。
とりわけ、フロックとシルバーの、父と息子の確執から和解に至るまでの過程は是非とも注目していただきたい点です。
『スター・ウォーズ』『新世紀エヴァンゲリオン』などでもそうですが、父と息子の物語というのは永遠のテーマなのでしょうね…。
(私がスター・ウォーズファンの方にも見ていただきたいと思っているのは、そういった親子愛をテーマとして扱っているから、という理由からです。笑)

また、脇役ではありますが海賊の一味たちや、セーラが手伝っていたレストランの女性店主なども皆個性的で良いキャラばかりだったと思います。

優秀なメカニックのフロックと、「何をやってもダメ」なのび太の対比

例によって今作もまた、のび太とゲストキャラの交流が描かれるわけですが、ゲストキャラのフロックは非常に優秀なメカニックの少年です。
その腕前は、嵐に巻き込まれ、大破した「ノビタオーラ号」をたった一日で一人で修理し、しかも改造まで施すほどのものです。
そんなフロックのことを頼もしく思う一方で、「自分は何をやってもダメなんだ」と卑屈になるのび太。(のび太にはあやとりと早寝と狙撃という特技があるんですが、ここではひとまず置いておくことにしましょう

けれども、どのドラえもん映画でも、最後の最後に事態を解決に導いてきたのは、そんな「何をやってもダメなのび太」なんですよね。

のび太の持つ最大の取り柄とは、やはり人徳なのだと思います。

「人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことができる」それが人間にとって一番大切なことだ、とは『のび太の結婚前夜』においてもしずかちゃんのお父さんが述べておられましたね。

この 「人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことができる」 のび太の心が、今作においても、シルバー一家の和解への糸口となっていきます。

今までの色々なドラえもん映画を彷彿させる描写

最初にも書いたように、私は最初本作を『南海大冒険』のリメイクだと思っていたのですが、実際に見てみるとむしろ『南海』要素は最初の海賊船のシーンぐらいでした。
が、完全オリジナル作品でありながらも、今までのドラえもん映画、大長編ドラえもんの諸々の展開を彷彿とさせる、ファンサービスとも言える描写やストーリー展開が多かったというのも本作の大きな特徴だと思います。

ドラえもん映画といえば親子で観に行けるファミリー映画の代表のような作品ですが、本作はオリジナル作品として高いクオリティーを保ちつつ、過去作のファンサービスも盛り込んであるということで、親子揃って楽しめる映画である、と言えるでしょう。

また、過去作のファンサービスといえば、星野源さんによる主題歌『ドラえもん』も、往年のファンからすればおっと思わされる歌詞が散りばめられていますね。
大山のぶ代さんが歌っておられた『ぼくドラえもん』のメロディーの一部が途中、挿入されているのも、ファン心をくすぐられるなぁと思いながら聞かせていただきました。

ジブリの「あのアニメ」に似ている???

これは決して否定的な意見ではないんですが、

・空に向かって浮遊していく巨大な船

・それを飛行機のような乗り物(ドラえもんの道具)で追うドラえもん達

…どこかで見たことがあるような気がしませんか?
そう、『天空の城ラピュタ』です。

(海賊たちの描写も『ラピュタ』風味を感じさせられますね)

また、レストランの女性などの「お助けキャラ」もまたジブリに出てきそうなキャラクターだなぁ…というのが率直な感想です。
(おいしそうな食事シーンの描写もジブリ風味ですよね)

とはいえ、決してパクリなどではなく、これは日本人の深層心理に「ジブリアニメ」が強く根差しているがゆえにどうしても感じられてしまうものなのだろうと思われます。
ドラえもん以外のアニメ作品でも、「これはラピュタっぽい」「これはナウシカに似てる」「これ、もののけ姫みたい」…等々、ジブリ作品と比較されることがしばしばありますが、それだけジブリアニメというものは、東西問わず様々な作品に大きな影響を与えているんですよね。
(ロボットアニメでなおかつ哲学的なテーマが織り込まれている作品が、『エヴァンゲリオン』のパクリだと非難されがちなのもよくあることだと思います…。実際には、エヴァ自体も色々な作品―—アニメに限らず――から影響を受けている作品だと思うんですけどね。ちなみに本作『のび太の宝島』に関しても、エヴァっぽい、という意見を一部見たことがあります

ですので、ラピュタに似ていようが、ジブリっぽいと言われようが、はたまた父と子の確執といった描写がエヴァみたいだと言われようが、ドラえもんはあくまで「ドラえもん」です。
○○に似てるからといって、パクリだ!などと目くじらを立てる必要はなく、かといって全然似てない!と全否定することもなく、「言われてみればなんかジブリっぽいな、でもやっぱりドラえもんはドラえもんだな」と楽しめれば十分ではないかと私は思います。

…と言っている割に、なぜこの記事のタイトルに「ラピュタを思わせる」なんて付けているのかというと、以前に「のび太の宝島はジブリに似てる=パクリだ!」などとこの作品を批判している意見を見たことがあり、それはちょっと違うのではないかという私なりの意見を提示したかったからなんですよね。

どうも、未だに水田わさびさん版ドラえもんはちょっとしたことで目くじらを立てて非難する人が多いような気がします…。
ドラえもんの第一のターゲット層はあくまで子供たちなので、子供が見て素直に楽しめる作品であれば良いと思うんですけどね。
(私自身はもう良い大人ですが、ドラえもんを観ている間だけは子供に戻ります。笑)

まとめ

総合的に見ても、最初から最後まで息をつく暇もない勢い溢れるストーリー展開、魅力的なキャラクター達と、個人的にはドラえもん映画の中でもかなり上位にくる作品だと思います。

気になったところを強いて挙げるとすれば、作画がよく動いているのですが、動きすぎて少し酔いそうになる場面もあったことと、最後の最後のあの問題は結局未解決のままじゃないか、という突っ込みどころが少々あるぐらいでしょうか。
(個人的には、これからの未来は私たち今を生きる現代人に託された…のだと解釈していますが。)

それでも、そんな多少の突っ込みどころも気にならないぐらい、全体的なクオリティーは高い作品だと思いますし、私にとっては大好きな作品です。

水田さん版のドラえもん映画は当初はリメイクとオリジナルを交互に制作されていましたが、最近はオリジナル作品が続いていますね。
ドラえもんのキャストが一新されてからはや10年以上が経過し、もう既に「新しいドラえもん」の土台がしっかり固まってきたということなのかな、と思います。
(もちろん、リメイクはリメイクで今後も楽しみにさせていただきますが。)

最新作『のび太の新恐竜』も、8月の公開日まで楽しみに待ちたいと思います。


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