今回は、2013年に公開されたイギリスの映画『 アバウト・タイム~愛おしい時間について~』についての感想記事を書かせていただきたいと思います。
主演の俳優さんはドーナル・グリーソンさんという方で、スター・ウォーズシリーズのハックス将軍役や、ハリー・ポッターシリーズのロンのお兄さん、ビル・ウィーズリー役が有名ですね。
映画『スター・ウォーズ』シリーズより
ハックス将軍は敵ながらも苦労人でどこか憎めない、愛すべき悪役といったポジションで個人的に好きなキャラの一人です。
それでは、そんなドーナルさんがスター・ウォーズに出演される前の作品、じっくり観させていただいた感想を書いていきます。
『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』 あらすじ
「ラブ・アクチュアリー」のリチャード・カーティス監督が、タイムトラベルを繰り返す青年が本当の愛や幸せとは何かに気づく姿を描いたロマンティックコメディ。
イギリス南西部に住む青年ティムは自分に自信がなく、ずっと恋人ができずにいた。
21歳の誕生日に、一家に生まれた男たちにはタイムトラベル能力があることを父親から知らされたティムは、恋人を得るためタイムトラベルを繰り返すようになり、やがて魅力的な女性メアリーと出会う。
しかし、タイムトラベルが引き起こした不運によって、その出会いがなかったことになってしまい、再び時間をやり直したティムはなんとか彼女の愛を勝ち取るが……。
キャスト……ドーナル・グリーソン・レイチェル・マクアダムス・ビル・ナイ・トム・ホランダー・マーゴット・ロビー・リンゼイ・ダンカン 他映画.comより引用
主人公のティムは、ひょろっとした体形と赤毛が特徴的な、ちょっと内向的な青年。
自由人であまり感情に流されることのない母メアリー、もと大学教員で今はヒマを持て余しており時折ティムと卓球勝負に高じている父ジェームズ、母の弟で几帳面でありながらも天然ボケなところもある叔父デズモンド、そしていつでもどこでも自然体な妹キャサリン(愛称キットカット)という個性豊かな家族に囲まれてイギリスはコーンウォール地方にて育ちます。
そんな彼が21歳になったとき、父ジェームズは「大事な話がある」と言ってティムを呼び出します。
映画『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』より
父から聞かされたのは、なんと我が家の男子にはタイムトラベルの能力が代々受け継がれているという、にわかには信じがたい話でした。
最初は冗談だと思いつつも、父に言われた通りにやってみると本当に過去へ戻ることができたティム。
ティムはこの能力を使って、自分が今一番望んでいることーー恋人を作ることができないかと模索し始めるのです。
タイムトラベルによって変わっていくもの、変わらないもの
映画『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』より
ティムのタイムトラベルの能力には制限があります。
・行けるのは過去のみ
・他人の気持ちに干渉ことはできない
・自分の子供が生まれる前には戻ることはできない(正確にはできなくはないが、それ以前の過去に戻ってしまうと後に生まれてくる子供の一生を大きく変えてしまう危険性がある)
の三つです。
とはいえ、自分自身の決まった過去に飛ぶことさえできれば何でもやりたい放題なので、ティムは女性へのアプローチに失敗したときなどはこっそり過去へ戻って、起こり得る未来を修正していくということができるわけです。
この能力を得たことによって、本来は内向的で女性との付き合いに自信のなかったティムは少しずつ自分に自信を持つようになり、女性へのアプローチもだんだんと積極的になっていくのでした。
とはいえ、他人の気持ちに干渉することはできないという制限上、どうしても変えられない運命もあるにはあるんですよね。
映画の冒頭、とある女性に告白した際、「今になって言われても困る」と言われるエピソードがあります。
それを聞いたティムは過去へ戻って、その女性に再度(女性にとっては初めてですが)告白するのですが、そのときの返事が「もう少し時間を置いてからもう一回告白してほしい」というものなんですよね。
つまり、最初から彼女の気持ちは決まっていた、ということになります。
これに関しては致し方ないこととはいえ、明らかに落胆してしまったティムのことがちょっと不憫になってしまいましたね。
タイムトラベルという夢のような能力によって、変えられることはたくさんあるけど、変えられないこともあるーーそんな事実を思い知らされたエピソードでした。
余談になりますが、ティムの部屋に映画『アメリ』のポスターが貼られていたのがなんだか気になりましたね。
これからティムを待ち受けている不思議な運命を暗示しているようで、印象的な演出でした。
運命の人、メアリーとの出会い
映画『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』より
そんな苦い失恋を味わいながら、就職し家を出てロンドンへ住むことになってティムは、昔からの悪友ジェイに連れられていったバーで運命の人・メアリーと出会うことになるのでした。
このバーが少々面白い形式を取っておりまして、なんと店の中が真っ暗でお互いの顔が見えないんですよね。
人間の心理的に、相手の顔が見えず声しか分からないという状態に置かれるとかえって相手のことが気になる、相手をもっと知りたいという強い感情を抱きやすいという傾向があるそうです。
そして、このシーン、映画の演出的にも面白い表現を試みていたな、という印象です。
というのも、本当に真っ暗で声しか聞こえないシーンなんですよね。
唯一分かるのが互いの声と、画面右端に映し出される現在時刻のみという。
この画面は全く変わらないけど時刻が少しずつ少しずつ進んでいくことによって、そして役者二人の声の演技によって、時間経過と二人の会話の盛り上がりを表現している、という演出が面白いな、と思いました。
そんな真っ暗闇という特殊な状況の中、すっかり意気投合した二人はおもいきって店の外で顔合わせをしてみます。
互いに顔を見合わせ、好感を持ったティムとメアリーは連絡先を交換し、良い感じになっていった…
ところで、とあるハプニングによって二人の仲は一旦リセットされてしまうのでした。
そのハプニングというのは、ティムがとある事件を回避しようと過去に戻りすぎた結果、メアリーと出会ったという事実がなくなってしまったというもの。
タイムトラベルにありがちな失敗ですね。
ただ、よっぽどこのことが悔しかったのか、ティムは何度もタイムトラベルを繰り返し、メアリーに会おうとします。
以前までのティムだったらすっかり自信をなくして諦めていたでしょうに、今回に関しては諦めずに何度もメアリーに会おうと孤軍奮闘するとことを見ると、よっぽどメアリーのことが好きなんだな、と思いましたね。
また、タイムトラベルを繰り返し過去を修正していくことによって、少しずつティムが自分に自信を持ち何事にも積極的になっていった、という見方もできるかな、と思いました。
家族の絆を感じさせられる、切ないながらも心温まるストーリー
映画『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』より
以下、映画の後半のネタバレについて一部触れさせていただきます。
未見の方はご注意下さい。
最終的に、ティムとメアリーは結婚することになります。
そんな二人の待ち望んでいた結婚式は、暴風雨の中という、シチュエーションとしては非常にまずいものでした。
また、ティムの職場の同僚による式でのスピーチがよりにもよって離婚にまつわる話になってしまい、ティムは何度もタイムトラベルによってスピーチを成功させようと奮闘しますが、他の人に頼んでも失敗ばかり。
やっとのことで父に頼んで成功を収めるまでは本当にハプニング続きの結婚式だったのですが、このときの父ジェームズのスピーチが非常に感動的な言葉で紡がれています。
「息子は優しい男だ。心が温かい。私は人生において誇れるものは多くないが心から誇れるのは彼の父親であることだ。」
…これから結婚する子供にとって、これほど嬉しい言葉はないのではないでしょうか。
ジェームズはティムのタイムトラベルという秘密の共有者としても、そして父親としても、ティムのことをずっと案じ見守っていたんだな、と思わされました。
また、メアリーに対して雨が降って残念だった?と尋ねたティムに対するメアリーの、「私たちの人生も同じよ、いろんな天気があるわ」という言葉も心温まる一言でしたね。
この結婚式のシーンは、この映画の大きな見どころの一つだと言えるでしょう。
そして、もう一つ、父ジェームズが癌に侵されていると判明してからの一連の展開も大きな山場ですね。
タイムトラベルによって過去の父に何度も会いに行き、何気ない会話を楽しんだり二人で大好きな卓球に熱中したりと父との思い出を噛み締めていたティムでしたが、そんなティムにメアリーはもう一人子供を作りたいと言い出します。
メアリーの気持ちはよく分かるけど、もしも子供を作ったら、それ以前の過去に戻ることはできません。
以前、ティムはダメな彼氏に振り回され続けてすっかり精神的に不安定な状態に陥ってしまった妹の人生をやり直させようと妹と一緒にタイムトラベルを試みたことがあります。
そしてその結果、生まれてきた赤ちゃんの性別が変わってしまっていたという衝撃的な事件があり、子供が生まれてくる前に戻ってしまうと後に生まれてくる子供の一生を変えてしまう恐れがあるということが判明したのです。
結局、ティムは子供を作ることを承諾し、最後に一回だけ過去の父に会いに行くことになります。
その際の二人の会話のシーンは、結婚式での父からティムに贈られたスピーチを思い出すと本当に切なく、そして心温まるシーンでしたね。
映画の序盤は、ティムがタイムトラベルの能力をフル活用して意中の女性と近づいていこうとする、ちょっとしたコメディ要素もある作品なんですが、映画終盤に近付くにつれて家族の絆というものの尊さを感じさせられる、とても抒情的な映画だったように思いますね。
最初は甘酸っぱい男女の恋愛を描いていたのが、結婚し、子供を持つことによって、家族愛、人間愛といったテーマに変わっていくーーそういった人の一生における「普遍的な愛」というものをこの映画では表現しているのかな、と思いました。
『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』感想まとめ
映像面に関して言うと、主人公ティム一家の暮らすコーンウォール地方の描写が非常に美しく、是非行ってみたい、と思わされましたね。
まっすぐ続いていく海岸線に白い砂浜、暖かな日差しといった風景描写が特に印象的で、こんなところで生まれ育ったらさぞかし感性豊かに育つだろうな…と思ったものです。
時間の流れさえも、この場所では他の場所と違ってゆったりと時が流れていっているような、そんな感じがしました。
この作品を鑑賞していて感じられたのは、タイムトラベルという突飛な設定を扱いながらも、何気ない日常、普遍的な毎日の生活描写を非常に丁寧に扱っている、ということでした。
特にそれが感じられたのが、映画の終盤、ティムが父ジェームズからのあるアドバイスを受けて、何気ない一日をタイムトラベルでもう一度味わってみるというシーンでした。
一周目の描写では本当に何気ない生活描写でしかなかったのが、タイムトラベルにより二週目の生活を送ってみると、
たまたま訪れた飲食店の店員さんの笑顔での接客を快く感じたり、
清潔に整えられた職場に感銘を受けたり、
また電車で隣に座っている乗客が大音量で聞いている音楽さえも心地よく感じられたり…
「一周目」では気付かなかったあらゆることにティムは「気づく」ことになるのです。
私たちも普段は朝起きて支度をして、学校なり会社なり出かけて…といった生活を送っていますが、そうした何気ない生活を送っているうちに「当たり前のこと」だと思ってスルーしてしまっていることはいくらでもあるかもしれません。
実のところは、昨日と寸分たがわず同じ日なんてあるわけないのに。
毎日何かしら違うことが起こっている、というのは当然のことなのに。
でも、そうした事実を忘れていってしまうんですよね、何気ない毎日をぼんやりと生きていると…。
タイムトラベルの能力に一定の制限をかけていることに関しても、過去に戻って何でもやり直せるということではない=「今」を大事にしなければならないということの重みを感じさせられますね。
個人的には、子供が生まれる前に戻ってはいけないという制限が特に強く印象に残りました。
(タイムトラベルの原理というものは映画の中では特に明かされなかったんですが、どうやらジェームズの家系の男性のみに能力が受け継がれていっているということを考えると、子供=夫婦を結びつける存在というのが何らかのキーワードになっていそうですね。)
この映画は、そうした何気ない毎日、一日一日を大切に生きるということの大切さを教えてくれる、そんな作品であるように思います。
素敵な作品に出会えて良かったな、と心から思えた作品でした。
(※家族の絆や父と息子の関係に焦点を当てた作品について、以下の映画の感想記事を書いています。)
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